千の旋律、千の悲哀、千の記憶Dear Loneliness Leave Me Alone

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | - | posted by スポンサードリンク
上半期ベスト(少女マンガ) 08:10


今年は少女マンガのコミックスをあまり購入していないんだけれど、
上半期ベストに入ってくるのは、


宇仁田ゆみ「うさぎドロップ 2巻」(祥伝社)
吉田秋生 「海街diary」(小学館)
小玉ユキ 「光の海」(小学館)
ろびこ  「ボーイ・ミーツ・ガール」(講談社)
芦原妃名子「月と湖」(小学館)

だろうか。残念ながら乱発されたタアモのコミックス群は琴線には
触れなかったし、大本命と思われた椎名軽穂「君に届け」は4巻の
時点で第一次停滞期に突入したのが目に見えてしまうのが少し苦しい。

ろびこは本当に凄い実力の持ち主だ。デビューからまだ幾年も経て
いない人間が、これほどまでの筆致と構成力を有しているなんて
驚きを禁じ得ない。彼女が描いた漫画はまだ10本と少ししかないのに。
ギミックの効いたシーンカットや構成、オーソドックスなストーリー
を奇抜なプロットによって脱構築する手法、そして色んな作家の
影響が見え隠れしながらも完全に自分のものにしているポップな絵柄。
最初から完成されている感もあるそれらのアビリティだけれど、
彼女が着実に作家としての階段を上っていっていることも伝わってくる。


そう、表題作「ボーイ×ミーツ×ガール」の48ページの結晶は、
彼女にとってネクストレベル突入を告げる鐘の音であり、到達点
である。自らの想いを上手く伝えあうことができずに別れた男女が
再会を契機に今ふたたび同じ道を歩もうとするまでを描いただけの、
そんなどこにでも転がっている風景。それこそ少女マンガ家を志す者
ならば、必ず通るであろうストーリーの定番中の定番。それを彼女は、
48ページという枚数を逆手にとって、その瑞々しさを表現しきった。
それを読み、評する人は必ずこの言葉を使う。「圧巻」。折り返し
地点となる中盤に起こる出来事を境に、ページ数で表すなら24Pめ
で語り部となる人称が見事な鮮やかさで入れ替わる。この構成には
唸らされた。経年による成長(裏返しの諦観と)を果たしたと思い
こんでいた少年の虚勢は打ち砕かれ、そこから少女の側からの彼への
一途な想いが描写される。少年から少女への内面のバトンリレー。
ページの端々に挿入される、かつての時代のぎこちない二人。照れ隠し
から表情を変えることができず本当の気持ちを言えない少年。それゆえ
彼の気持ちに対する不安の種が芽を出す少女。誰もが通過する、
思春期にはよくある話だ。青春という季節の通過儀礼だ。僕もそうだし
君もそうだろう。「本当に好きだったあの人と、今ならもっと上手く
付き合えるのに」。あの子ともっと早く出会っていたらと思う分だけ、
あの子ともっと遅く出会えていたらと悔やむこともある。出会う順番
は変えられないとわかっていても、そう考えてしまうのは当たり前だ。
少女パートの、後悔に満ち祈りにも似たモノローグが切なく苦しい。
そして美しい。


「何を考えているかわからない」。14歳、主人公の少年が少女から
言われた言葉が胸に突き刺さるのは、自分自身にも思い当たる節が
あるからだ。その時の僕は15歳だった。生まれて初めて付き合った
女の子は、ほんのちょっと前までランドセルを背負っていたわけで、
でも頑張って頑張って思いの丈を伝えてくれたのに、友達に付き添われ
ながらもぶつかってきてくれたのに、僕は何もかもを受験のせいに
して彼女の気持ちを踏みにじった。あぁ、そっか僕は彼女が笑った
ときに右頬にできるえくぼがとてもいいなあって思っていたんだ。
でも、女の子となんて何を話していいかわからない僕は、同級生で
さえ殆ど誰とも口を聞かなかったのに、ましてや2つも歳下の彼女
と会話を弾ませることなんてできず、あげくの果てに俯かせてばかりで。
まるでさっぱりだ。僕は何一つ彼女の魅力を引き出してあげられ
なかった。彼女の部活や生徒会が終わるのを待って、一緒に帰って
あげればよかった。何度も何度もえくぼを見てみたかったのに、
そんな努力をいっさいしなかった馬鹿野郎だ。翻って今の僕は、
女の子を不安にさせたりしないだろうか。俯きがちにさせてはいない
だろうか。口角を上げられているだろうか。そこにえくぼがあろう
となかろうと、って。


過去にあって一番思い出したくないような苦い記憶を、そんなことを
思い出してしまうような作品が、悪いわけがない。この48ページを
引っさげて、ろびこは更に飛躍するだろう。願わくは、デザート編集部
の人たちは安易な企画を提案せずに、彼女の作家性に全てを委ねて
もらいたい。きっと彼女は君たち(の会社)にお金をもたらすよ。


ろびこは凄い。来年はそう思っている人数は倍になるだろう。再来年
はさらに倍になるだろう。ろびこは凄い。彼女の成長は2007年最大の
収穫になっているはずだ。個人的には処女短編集「彼女がいなくなった」
所収の「ラプンツェル」が素敵だ。種村季弘がかつて記した「少女流謫」
というテーマのテキストを副読本にしたいくらい。

| - | comments(0) | - | posted by 一本道ノボル
スポンサーサイト 08:10
| - | - | - | posted by スポンサードリンク
Comment








<< NEW | TOP | OLD>>