千の旋律、千の悲哀、千の記憶Dear Loneliness Leave Me Alone

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遠く短い光から 水のしずくハネかえる 06:57


■今週一番の驚きと言えば、微熱教授のテキストにhueコンピならびに僕が書いた文章が取り上げられたことに他なりません。そこで微熱教授は、ヒップホップという音楽が成り立ちと進化の中で抱えてきた"矛盾"の中から立ち上る魅力について語ってらっしゃいます。


http://pomeric.blogspot.com/2008/02/various-artists-once-hue-always-hue.html


僕は、改めて「アンダーグラウンド」ピラミッドの最下層部でしかなかったはずの「ナードヒップホップ」が、いつの間にか確固たるセグメントを築き上げてしまっていたことについて考えさせられました。まあ周りのアンダーグラウンドの連中が自ずと消えていっただけ、という表現もできるのでしょうけれど。


「(hueは)ビートやリズムに対して無自覚/無知だった僕らの劣等感から出発している」


これは上記のテキストで引用された僕の言葉です。僕らというのはsinも含めての話ですね。端的に表せば、それしかないわけです。ジャンルという境界を行き来する「マージナル」という活動指針は、完全なる後付けでしかありません。ヒップホップという超巨大産業に真っ向から挑むなんてナンセンスなわけですよ。


そもそも僕やsinはヒップホップらしい音楽なんてビースティー以外は聴いたことがなかったわけですから。高校時代に、「そういや渋谷陽一のミュージック・サテライトでナントカいうラッパーが射殺されたとか言ってたなあ。怖い世界だなあ」という程度の認識。ヒップホップに限らず、ブラックミュージックを聴いたことすらないですよ、未だに。5年ほど前の日記に書いた記憶がありますけれど、「自分のCDラックの人種別比較は、白人9:黄色人種1:黒人0だ!」と。これは今現在も変わってません。おそらくsinだってそうでしょう。ヒップホップのA&Rをやるからといって、ご丁寧にヒップホップのクラシックに認定されている音楽を聴いているはずがありません。そんなことをすれば「思い込み」という名の牢獄に幽閉されてしまうのです。


「思い込みを捨て、思い付きを拾う」


僕らは僕らのパースペクティブの中でヒップホップを解釈すればいいんじゃないのかな、とそんな感じですね。ヒップホップってそれが許される唯一のジャンルでしょ。田畑と山と川しか存在しない場所に暮らした田舎者で、煙草もやらず酒も飲まないし空気が悪いところが嫌いだからクラブにも当然いかず、ビートやリズムなんて意識して音楽を聴いたことがなく、超がつくほどタイトな服しか着ない。他人を蹴落とすのなんて大の苦手で、何が何でも成功したいとか、巨万の富を手にして女をはべらかしたいとか人生で願ったこともない。刺激を唾棄し、何も起こらない退屈を愛する。群れることを嫌悪し、徒党を組むことを厭忌する。そんな人間がヒップホップと向き合えば、それすなわち劣等感の塊ですよ。ルサンチマンこそが根源です。絶対的な弱者であるがゆえに育まれた感情が、多くの人が気付かなかった琴線を生み出していく。生じる隙間を狙って光を照らすんです。ヒップホップのはずなのに、どうしてこんなにも美しいのだろう。どうしてこんなにも胸に染みるのだろう。
■hueはビートやリズム、リリックやフロウといったヒップホップの重要な要素について最初から諦めています。ですが、それは日本語としての諦めということではありません。仏教に由来する「諦」です。つまり、「真実」を意味するサンスクリット語「サッティヤ」からきています。すなわち真実を明らかにするということ。自分たちの出自、素養、嗜好それらの諸々をしっかりと見つめ、現実そのものと移り変わりをきちんと見極める。ヒップホップという大きな大きな産業を見極める、そして自分たちが生きてきた時間によって培われた感性をつぶさに見つめる。答えはすぐに出るものです。sinはマイケル・ナイマンのサントラを愛していることから「リリカル」と「センチメンタル」が。僕は「ノスタルジック」と「メランコリー」が。それをパースペクティブとしてヒップホップに持ち込む。「hue」とは色相を意味する単語ですが、それを支える四原色は上記の要素に他なりません。昨年末にリリースされたhueコンピはそんな活動の最新報告書なわけですね。僕は日本の他のレーベルについてよく知りませんが、「その人がいなくなればその全てが崩壊する」という唯一無二さにおいてはhueほどそれに該当するものはないでしょうね。sin以外に代わりはできないということ。


■もうひとつ面白い話があります。とかくヒップホップというジャンルは勝ち負けを決めることを原理とするジャンルであり、それが大きな物語として作用しています。誰かと誰かは対立し、誰かは誰かを蹴散らしてのし上がる。そんな「Win Or Lose」な二項対立の最たる音楽です。ですが、僕は(sinについては話し合ったことがないのでわかりませんが)、幼稚園の頃より祖母から徹底的に「負ける」ことを教えられて育ちました。勝ち負けのゲームの土俵に乗るな、と。そんなものは下らない、と。「負けるが勝ち」という格言が人生で最初に憶えた言葉です。誰かが誰かより優れているだとかそんなものを決めることに躍起になっていては、人生で大切なものを見失ってしまう。「暢平は、勝つために生まれてきたわけではないの。どうしても勝負しなくちゃいけないところでは、あなたは負けなさい」。これは僕が8歳の時の祖母の言葉です。爾来、僕は祖母の言ったことに疑問も感じることなく、忠実に行動し、勝負ごとは全て捨ててきました。対戦型ゲームなんて人生でやったこともありません。ボーリング等の遊戯はわざとガーターに入れたりしました。スポーツでは全てを負けてきました。義務教育の間はとりたてて勉強もしませんでした(中学時代は136人中114番でした。ゆえに母親を多いに泣かせました)。受験は指定校推薦です。就活も適当にしかしていません(超氷河期でしたしね。今の時代なら目くじら変えてやっていたでしょう・苦笑)。とりたてて守るものもなければ、しがみつきたい生もない。少なくともそんな人間が、曲がりなりにも勝ち負けを重視するヒップホップのレーベルに深い関わりを持っている。こんな痛快な矛盾というものはないでしょうね。



■そして、多くの人の意識が変わるであろうリリースが初夏には皆さんのものとに届けられます。Factorのニューアルバムです。その中に、sinの提案によって生まれた、Nomadをフィーチャーした曲があります。タイトルもまだ決まっておりませんし、ミックスすらされていませんが、sinが先月末にhueブログに速報を流していましたので気になっていた方も多いと思われます。一足先に聴かせていただきました。これは、カナダとベルギーと日本、それぞれの場所でそれぞれの時間を生きてきた同い年の三人が、音楽を通じて出会い、育んでいった友情の結晶です。まさに無敵のトライアングル。1981年にこの世に生を受け、今に至るまで流れた27年の月日。その中でたくさんの出来事が起こり、それを体験してきたわけで、正負様々な感情を抱えつつもこんなにも優しく愛おしい福音が生まれたことは感動的ですらあります。化学反応だとか、音楽の魔法だとか、そんなクリシェを駆使する次元を軽く超えています。今からはるか昔、1999年7月に僕が日記に記したこと。それがそのまま音楽として鳴らされていました。


「僕らは、互いに違う景色を見ながら一つの時代を生きている。
 強がって、自分は自分、人のやり方は関係ないと言ってみても、
 本当はみんなどうしてるって声を掛け合って生きていきたいんだ。
 今まで色々大変なこともあったけど、最近はどうなの? 
 大丈夫?  一緒にやっていける事はない? 
 だって違う景色を見ながらも僕らは一つの時代を生きているんだよ」


ちなみに上記のテキストは、ジェネラル・リサーチのデザイナー小林節正がTシャツにプリントしたメッセージです。中目黒にある「Cow Books」の前段階となるショップ「WIN A COW FREE」がオープンした際に制作されたノヴェルティのものだったことを記憶しています。


僕の数少ない音楽聴取体験の中から、アーカイブを必死にあさって辿り着いた結論は、こういうものでした。


「この曲に、最も近いものは、電気グルーヴの『虹』である」


こんなバケモノみたいな曲を聴いてじっとしていられるほど、僕の感性は枯れきってなんていません。真夜中にも関わらず、服を着替え、スニーカーを履き、iPod片手に真っ暗闇の中に駆け出していました。 アドレナリンが全身を駆け巡り、脳からはエンドルフィンが分泌され、それゆえ足は止まらず、疲弊すら感じず、気づけば15kmを走り隣の市に到達していました。その間、10回以上はこの曲を繰り返して聴いていたでしょうか。全く新しい音楽が生まれた瞬間に立ち会える喜びは、どんな快楽よりも勝るものです。 これを一人でも多くの人に届けないといけない。こんな名曲を埋もれさせてしまったとしたら、それは罪に近いものがあるでしょう。そして、必ずやNomadはまた日本に戻ってきてくれて、この曲をみんなへと贈ってくれるはずです。
| coming_out | comments(0) | - | posted by 一本道ノボル
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