千の旋律、千の悲哀、千の記憶Dear Loneliness Leave Me Alone

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デビュー作には作者の全てがある。 19:15


小玉ユキ 「光の海」(フラワーコミックス)




 一昨年の岩本ナオ(「スケルトン・イン・ザ・クローゼット」「Yesterday,Yes A Day」)に続き、またしても驚嘆すべき才を有した作家が小学館「flowers」より単行本デビューを果たした。小玉ユキ。 かつて、コダマユキという名義で今は無き「CUTiE comic」から漫画家人生をスタートさせたその人だ。と、言っても定期購読していた俺もその当時の作品を記憶していないくらいなので、どれくらいの人がわかるのか定かじゃないけど。


 その当時の作品を含め、未だ単行本化されていない作品はゆうに10作を越える彼女であるけれど、それらを差し置きデビュー作として選ばれたのは「人魚」をテーマに描かれた5編(32ページ)のオムニバス。人魚が条例で保護動物指定され、人間と共生する世界で起こる恋と別れと葛藤とアイデンティティ・クライシスを描いた物語だ。

 人魚という、「半人間」的存在を描くならば、高原英理「ゴシック・ハート」を紐解くわけではないが、「人外(にんがい)」として人間との相克をクローズアップさせたくもなるところ。だが、小玉ユキは違った。非人間ではなく、あくまで人間と変わらぬ存在として人魚を扱う。或る話ではその地の方言を話し、或る話では言葉はしゃべらずとも人間の方が彼女(?)の心の声を聞き、或る話ではオスの人魚の同性愛を描き、或る話では人間同様にオシャレに興味を抱く。その魅せ方たるや、違和感を一切感じさせることなくあまりにも自然であり、ストーリーテラーとして天賦の才を感じさせてくれる。


 人魚がいるその世界が特別なものではなく、そこで暮らす人々の日常や風景の描写に胸を撃たれる。まるで俺たちが生きるこの世界にも、もしかしたら人魚がいるかもしれないと思わせてくれるSF作品。もちろん、ここでのSFとはScience Fictionの略ではなく、藤子F先生的「Sukoshi Fushigi」のこと。仄かな幻想、恋と日常。あぁ、凄い。世界にはこうしてまたとんでもない才能が出てくるんだ。岩本ナオしかり、作家に寄り添い育て上げ開花させたであろう、flowers誌編集者の懐の深さを痛感する。今月からは、「鶴の恩返し」にヒントを得た新連載「羽衣ミシン」がスタートした。またも異形がモチーフとなっているけれど、この作者の力量をもってすれば良作になるのは当然で、だからこそこの手の作品以外のものを読みたくてたまらない。是非とも未単行本化の作品の数々を一冊にまとめてほしいものだ。

 なお、高野文と松本大洋の対談(ユリイカより)から用語を使わせてもらえば、漫画家としての「地肩」の強さも特筆に値する。


収録作品:
『光の海』
『波の上の月』
『川面のファミリア』
『さよならスパンコール』
『水の国の住人』


http://www012.upp.so-net.ne.jp/kodamayuki/
| manga review | comments(0) | - | posted by 一本道ノボル
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