千の旋律、千の悲哀、千の記憶Dear Loneliness Leave Me Alone

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SOPHCY(ソフィー)と世界 10:36


この数ヶ月というもの、優れたフィクションをあえて遠ざける毎日を 送っている。とりわけ、映画や小説に対する疎遠っぷりは尋常じゃない くらいで、摂取する物語といえば少女マンガくらい。で、のっけから 話が逸れていくけれど、「flowes」4月号は何と言っても岩本ナオ の最新読みきりに期待を高めていた僕でした。「やがてキラキラ」。 島で育った幼馴染の司とミイナは、高校入学後に付き合いはじめる。 が、彼は子供の頃から知っているミイナのことを、とても彼女とは 思えなくて・・・。という、内容的にはよくある話。実は、チェック 漏れがあったのだけれど、この話には前日譚があったらしく2月号に 「チマチマの贈り物」としてミイナ側の視点から、二人が付き合うまでが描かれた作品が あったのだった。無念・・・・。


さておき、「やがてキラキラ」を読む。本音としては、岩本作品 としては肩透かしのクオリティだと思った。世間的にもそのようで、 「岩本作品の中でも下の部類」とか「どうしちゃったんだ?」という 声が目立つのだけれど、僕はある瞬間から涙が止まらなくなった。 1ページ目から、なぜだかデジャビュを感じた。大筋の物語ではない、 ディテールに、だ。司が入ったコンビニの棚の陳列。コンビニ内から見た外の景色。道路のアーケード。頭のなかがぐるぐる回る。海馬内検索がはじまる。そしてミイナが言う。

「TSUTAYAによってかん?」。

映し出されるフェリー乗り場。そしてだだっぴろい印象的な広場。


フェリー乗り場 コンビニ TSUTAYA 広場


全てのピースが一つになった瞬間、記憶が甦る。これは、JR宇野駅前なんだ。そして、フェリー乗り場は宇野港だ。岡山方面から直島へ向かう際に乗るフェリーが出入港する。そのことがわかった瞬間、僕の瞳には滂沱の涙。直島へ向かうべく、大好きな人と昨年二度ここを訪れた。そしてこれからも何度となく訪れるだろう大切な場所。このコンビニ(セブンイレブンだ)に入って時間を潰した。近くに大きなTSUTAYAがあった。奇妙なモニュメントが駅前にそびえ立っていた。スケーターが喜んで滑走しそうな広場があった。その時、そこにいた人の全てを僕は今でも記憶している。1枚の写真でなくとも、映像でなくとも、マンガの中のラフな筆致(岩本ナオの描く線でも)であっても、その場の空気感までが脳を支配する。改めて思う。記憶とは、風景とは。僕ら人間は、やっぱり一度見たものは全て脳内にストックしてあるんだろうな。本当に全てが。ちなみに、フェリー乗り場から司とミイナが帰っていく島の名前は「霧島」だった。嗚呼、岩本先生・・・。 関取かよ。
閑話休題。フィクションに親しんでいないとすれば、今年に入ってどんな本を読んでいるのかと言えば様々だ。本と洋服に使う金は惜しんじゃいけない。


東浩紀×北田暁広  「東京から考える」
松岡正剛      「17歳のための世界と日本の見方」
          「日本という方法」
内田樹       「下流志向」
          「狼少年のパラドクス」
佐山一郎      「雑誌的人間」
日垣隆       「個人的な愛国心」
寺脇研       「格差時代を生きぬく教育」
阿部和重×中原正也 「シネマの記憶喪失」
小川洋子      「物語の役割」
春日武彦      「無意味なものと不気味なもの」
巽孝之 編      「人造美女は可能か?」

そしてもちろん、アル・ゴアの「不都合な真実」。


真に優れたフィクションは人生を支えてくれる。そんな作品に出会えた瞬間は、かけがえのないものであり、至福の時であり、世界や生に対する執着心が芽生える直接的契機でもあるんだ。そこからサブカルチャーへのラビリンスに迷い込む経験の或る人は、本当に多いだろう。フィクションは偉大だ。でも、フィクションだけじゃ、お話の世界だけじゃ、生きていくのがしんどいのもまた事実だ。いつもいつでもフィクションが有効だなんて、人間だものそんなわけない。今の僕がそうだよ。で、そんな時にしっかりと心が壊れたりしないように強固な接着剤になってくれるのはアカデミズムであったり、随筆だったりする。絞りに絞ったピンポイントと、森羅万象の徒然と、対象は真逆なんだけれど、なぜだか隙間に入り込んでくるんだ。とりわけ、僕なんかは数年前から内田先生や松岡師範に入れ込んでいるクチなんだけれど、彼らの小気味よくて心地よい語り口、切り方の角度や、繋げ方の鮮やかさは、それこそ世界が反転するかのような、フィクションじゃ絶対に経験できない読後感が味わえるんだ。神の手をもった外科医になぞらえたっていいくらいさ。体験することによって新たな知を得て、新たな血を得る。知的新陳代謝を高めることを休めた時、脳は腐っていくよ。


携帯で小説読んでいるような君へ。その二つ折りを叩き割っちまいな。左から右へ日本語を読み、スクロールによって続きを得ている君へ。そのディスプレイをぶっ壊しちまいな。と、いうのは大袈裟だけれど、そんなんじゃいつまで経っても見える地平は変わらないまんまじゃない。世界史や日本史の授業が退屈なんだったら、セイゴオ師範の「17歳
のための世界と日本の見方」を読んでごらんよ。鳥肌立つ瞬間が何度となくあるよ。何の気なしに現代に生きている僕たちだけれど、日本という地で生きることの美しさや、そこから未来に伝えていかなきゃいけない大切なことが、たくさん取り出せるよ。13歳のハローワーク世代の君たちにとって、まず先に知っておくべきことは職種や業種とその成りかたなんかじゃなくって、こういうことだと僕は思うんだ。


いいかい。僭越ながら僕がモットーにして生きていることを君たちに贈るから。三つあるんだ。それを求める必要は一切ないんだけれど、何処の馬の骨とも知らない人間がそういえば言ってたっけ、みたいな感じで心の奥底に留めておいてくれるとありがたいな。


一つは「SOPHIA」。智慧や叡智ってことだね。そしてそれらを愛する(Philos)ことから生まれたのが、二つめの「PHILOSOPHY」。知を愛するということで哲学だ。哲学っていっても僕が考えるのは、そんな堅苦しい学問的な漢字のものじゃなくって、カタカナのフィロソフィーね。例えばJ文学を提唱しだした頃の「文藝」で「インディーズ哲学!」とかそんな風に提唱されたものを指すわけで。この場合は、自分が生きていくうえで「決してブレたりしない軸」のようなもののことね。ポリシーというのもちょっと雑ざってるかな。僕にだって君にだってあの子にだって、フィロソフィーはあるんだ。椎名林檎が「幸福論」の中で唄った「私は君のメロディやその哲学や言葉すべてを守り通します」というラインの"哲学"が近いんじゃないかな。そう、些細なことからフィロソフィーははじまる。意識的になろう。なんにでも自覚を促そう。時には怠惰は必要だけれど、それと思考停止を一緒くたにしちゃだめだ。僕らはそこから変わっていける。


そして三つ目。「LITERACY」。読み書きする能力のことだけれど、現代では誰もそう使っちゃいないね。メディア・リテラシーなんて聞いたことあると思うけれど、この場合は数多の恣意性の高い情報から、一歩でも真実に近づくために取捨選択を行い読み解く力だ。メディアに限ったことではなくって、この世界はとてもとても濁っているよね。目に映るもの全てに何らかのフィルターがかけられちゃってるし、自分からかけている人もいるだろう。だから、濾過装置としての役割を果たすのがこのリテラシーというパワーだと思ってるんだ。



それじゃ、おさらいだ。簡単にだけれど三つ挙げたね。

「SOPHIA」
「PHILOSOPHY」
「LITERACY」

僕はこの三つを強引に纏めて、一つの単語にしてみたんだ。造語だから調べたりしないでね。それが・・・。


「SOPHCY」(ソフィー)


三つの単語から少しづつ取ってみたんだけれど、智慧を意味する「SOPHIA」が大半を占めているのがミソかな。これがなければ、フィロソフィーも生まれないし、リテラシーを身に付けることだってできないもんね。だから僕は本を読むんだ。「SOPHCY」を高める
ために、貪るように。


みんな、教科書やノートは教室の机やロッカーの中に入れっぱなしで構わない。でも、カバンの中にはいつも本を入れておいてほしいんだ。図書館で借りたものでもいいんだけれど、できれば自分のお小遣いで購入することの楽しさを知ってもらいたいな。じゃないと、付箋を貼ったり書き込んだりとかして自分なりに咀嚼することができないもん。必読書なんてシステムは悪だ。なくしちゃえばいい。朝の読書、これも悪だ。本なんてみんなで読むもんじゃないよ。たとえば、君たちがロールモデルとするような人たちは「本を読むな!」なんて言ってる? 僕が知る限り「テレビなんか観るな!」という人はいても、知へアクセスすることを禁ずるような表現者は、一人とていないんだ。君たちが大好きな大人は、きっと正しいことを言ってくれているよ。

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